随想

31文字に収まりきらないこと

好きなものの話

音楽が好きだった。自分が悪いことは知っていたから。

もう十年以上も前の、小学生の時から、それに近しいことには気付いていたんだと思う。

タイトルは忘れたけど、幸せのことを考えた作文を書いた。学校の課題で、なんだったか、自由に何枚か、とか、そんな類のものだったと思う。

 

悲しまない方法と苦しまない方法を書いた。努力の仕方も書いた。「それを悲しいと思わなければいい」「苦しいと思わなければいい」「楽しいと思いながらやればいい」そんな内容を書いて、当時まだ神だった母親に見せたら「だったら楽しいと思いながらずっと勉強していなさい」と言われた記憶がある。

 

当時は、何かずれたんだろうな、という間違いの感覚を持った。根本的な間違いではなく、何か一部がずれているから、否定されたのだと思った。

今は、間違っているとは思っていない。

 

音楽が好きだし、何かを好きだという人が好きだ。自分が気がつかないものに気付いて、笑ってくれる人が好きだ。

どんな思いで書いたのだろう、どんな人を思ったのだろう。どんな部屋で書いたのだろう、陽射しが差していたのだろうか、西日だったのだろうか、まだ白い光の差すうちに書いたのだろうか。

どんな季節で、どういう暖かさのなかで書いたのだろう。どれだけの思いで、どこまでを言葉にして、こんな優しい歌を作ったんだろう。

 

たかだか四分やそこいらの時間で、誰かの感じた世界を感じられる音楽のことがずっと好きだった。

子供の頃から、ずっと幸せになりたかった。